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法改正 2021/02/03

4月から大企業で中途採用率の公表が義務化されます

2020年3月31日、労働政策の総合的な推進及びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)が改定されました。
この改正法により、大企業に対し中途採用比率の公表が義務付けれます。
施行は2021年4月1日です。
中途採用比率とは「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」です。
 

改正の目的

少子高齢化社会の現代においては、より多くの人が、より長く多様な形で働ける社会へと変化していかなければなりません。労働者が希望する職業や良質な雇用に円滑に就職できるよう支援し、キャリア形成や再チャレンジができるよう、中途採用に関する環境整備を行っていく必要があります。
中途採用に関する情報公開をすることで、職場情報を見える化し、長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにし、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進し、中途採用の活性化を狙っています。
 

公表義務の内容

<対象>
常時雇用する労働者の人数が301人以上の大企業
中小企業については、すでに中途採用が活発なこともあり、今回対象から見送られました。
今回の改正は、大企業を中心とした「新卒一括採用制度」を見直し、企業間での中途採用の動きの活性化を目指しているのです。
 
<公表の方法>
公表方法を定める、労働施策総合推進法施行規則の改正省令が2020年12月28日に公布されました。
 ①中途採用比率の公表は、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように行うこと
②雇用する労働者数には、通常の労働者に加え、短時間正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短く、かつ通常の労働者と同等の待遇を受けるもの)を含むこと

なお、単に中途採用比率を公表するだけで、職場の評価ができるかというとそうとは言えません。
労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会の報告書の中では、「中途採用実績の多寡のみをもって職場に対する評価がなされるべきものではなく、また、求職者にとっても採用後に自身が働く姿がイメージできる情報を得られることが有用であることから、企業におけるさらなる職場情報の自主的な公表が進むよう、支援を行うことが適当である」としています。
大企業には法的義務のある項目以外にも自主的な公表が求められると考えられ、中小企業についても自主的に公表ができるよう、支援を進めていくのではないでしょうか。
 

中途採用をめぐる状況

これまで中途採用率の公表義務化について説明してきましたが、厚生労働省は2019年に現在の中途採用をめぐる状況についてまとめています。

■入職者、転職入職者数の推移

入職者数、転職入職者数は長期的には増加傾向になっています。

 ■入職者の内訳

パートタイム労働者が大きく増加、一般転職者も緩やかに増加しています。

■企業規模別の中途採用割合(一般労働者・雇用期間の定めなし)

従業員規模が大きいほど中途採用割合は低くなっています。

■正社員の採用方針(企業規模別)

企業規模が大きくなるほど新規学卒に重点を置いており、企業規模が小さくなるほど中途採用に重点を置いていることがわかります。
 
【参照】厚生労働省職業安定局 2019年9月27日 「中途採用に係る現状等について」 
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000557900.pdf
 

今回公布された省令では、中途採用比率の公表についてしか触れられていませんが、今後指針が発表されると考えられます。
企業、労働者双方において中途採用・転職・再就職ニーズは高まっていることから、今後中途採用が一般化することが考えられます。そのためにも中途採用比率の公表準備の他に、中途採用の基準や内部処遇等の整備が必要となります。

 
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